MARBLE B&Bの階段と廊下に人感センサー付きのフットライトが設置されている。設計中、建築家が「そんなの本当にいる?」とか、工務店も「電源が取れないから付けられない」とか言う。付けられないじゃなくて、付けてください。私の「絶対に、どうしても!」という強い意志で設置した経緯がある。
ベルギーの首都、ブリュッセルを訪れたときに、現地在住のお友だちと夜遅くまで食事を楽しんだ。その日は、寝るだけだからと安いドミトリーを予約していて、宿に到着した頃には既に同部屋の全員が就寝していた。暗闇の中、物音を立てないように、指定された二段ベッドのハシゴを上り、支度を調えて寝ようとすると、部屋のドアが開いて廊下から強烈な光が差し込んだ。同室の誰かがトイレに行ったのだ。一晩中、トイレに行く人、早朝チェックアウトする人、シャワーに行く人がドアを開ける度に、私の枕元に光が入り、ほとんど眠れなかった。
そんなことがあって、夜中に部屋を出たときに、わざわざ廊下の電気を付けなくてもいいように、足下を照らす人感センサーの照明を付けたかった。ほんのちょっと、ささやかな灯りが欲しかった。
シンプルなデザインで、存在感がないくらい壁に馴染むフットライトを探して、ショールームに出かけて実物を見たり、カタログで何社も比較検討してようやく選んだフットライト。建築家は、施工が簡単なコンセントに付けるタイプのフットライトを勧めてくる。そういうことではない。壁とライトがフラットでないと美しくない。夜中にトイレに行くときも、これくらいの灯りがあれば安心。万が一、夜に避難することがあっても、きっと役に立つと思う。
ちなみに、MARBLE B&Bはすべて無垢のフローリングを使っている。予算を抑えるために、自宅側だけを無垢材にする選択肢もあったが、木のにおいや肌触りにこだわりたかったので、宿のスペースもやや贅沢な作りになった。
2015年11月某日、この日も東京の自宅からカシマスタジアムへ向かう前に建築現場に立ち寄ると、大工の大津さんが黙々と2階の廊下に板を張ってくれていた。足音が響きにくいように、この下に防音のシートが敷いてある。あのとき、大津さんが1枚1枚丁寧にフローリングを張っている姿を見れたことで、廊下に愛着が湧いた。完成品だけでなく、ものづくりの過程を見てきたことは、私にとって大きな財産になった。日々、大事にモップ掛けしている。
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