自称マンホールマニアの家主は、世界中を旅しながらその国のマンホールを見て歩くという趣味がある。マンホールを作っている長島鋳物さんの工場にもお邪魔させてもらったことがある。今では日本でもデザインマンホールが多く見られるようになったが、世界共通の公共の蓋デザインは、おもしろい。
マンホール発売のニュース
2014年某日、そんな家主に遂にマンホールを手に入れる機会が訪れた。国立競技場の解体工事が決まり、長年使われてきた座席や備品を販売するというのだ。その中に、歴史を刻んだマンホール限定20個販売というのがあった。これは欲しい!絶対に欲しい!そして、将来家を建てることがあれば、埋め込みたい!
「SAYONARA 国立競技場 FINAL“FOR THE FUTURE”MEMORIAL GOODS」として、国立競技場 の座席や備品等を、2014 年 5 月 31 日(土)より「チケットぴあ」Web サイトにて販売を開始いたします。
独立行政法人日本スポーツ振興センターホームページより
2014年5月31日、チケットぴあのサイトにアクセスして10時発売を待つ。時は来た。発売開始と同時にマンホールはどの商品よりも先に売り切れた。1分もかからず完売。やった。買えた。私は遂にマンホールを手に入れた!
歴史を刻んだマンホールが宅急便で届く
夏のある日、宅急便が届いた。プチプチに包まれた重厚なマンホールを両手に抱え、配達員の方が妙な表情をしていた。国立競技場の刻印に胸がいっぱいになる。
後日わかったことだが、限定20個のマンホールはそれぞれ中央に「汚水枡」とか「水槽」とか書かれたものもあったようだ。私の元に届いたものは、とてもシンプルに「国立競技場」とだけ刻印されたものだった(汚水枡じゃなくてよかった)。
車にマンホールを積んで家づくり
当時、私は東京の阿佐ヶ谷という町に住んでいて、サッカー観戦のために鹿嶋市をよく訪れていた。鹿島アントラーズに夢中になった末にこの町に移住しようと決め、土地を買い、建築中の様子を見にいくときはいつも車にマンホールを積んでいた。
2015年9月、配筋検査の日もマンホールを設置する予定の玄関で夢を膨らませていた。
マンホール周辺の詳細を決める
鹿島アントラーズのホームタウンである鹿嶋市に、国立競技場のマンホールがある小さな宿をつくる計画は前途多難ではあったが、着々と進んでいった。建築家の方が設計段階で「そんなにマンホールを大事にしたいなら、壁に飾るのはどうか」と提案してくれたことがあったが、マンホールは地べたに置かれているものであって、壁に垂直に飾るものではないと却下。ならば、コンクリートで固めて設置しようと言う。固めてしまったら、蓋が取り出せない。それは、蓋が蓋ではなくなってしまうと却下。結局、金枠を作ってもらって、マンホールが取り出せるように設置してもらった。
時々、宿のお客さまに「このマンホールって、どこにつながってるんですか?」と聞かれることがある。決して地下施設があるとか、スタジアムに続く近道というわけではない。
マンホールを設置した玄関には、ヨーロッパの石畳のようなタイルを選んで敷いた。ご丁寧にマンホールを照らす照明までつけている。こうして国立競技場のマンホールは、この上ないほど過保護に扱われた末にぴったりと玄関に収まった。
マンホールのある家、遂に完成する
サッカーに興味のない人にとっては、なぜ家の中にマンホールがあるんですか?という話しなのだが、サッカー好きの方には、ちょっとだけ喜んでもらえるかもしれない。そして移住から7年経った今、マンホールを取り外すときに必要となる、手かぎという引っかけ棒でマンホールを取り外し、金枠とマンホールをいったんきれいに掃除したい。
鹿島アントラーズのホームタウン鹿嶋市に、国立競技場のマンホールがある小さな宿。このマンホールに気付かない方も多いけれど、サッカーファンの方はぜひ「お、これがあれか」と見ていってください。
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